AI・半導体株が急落…米中対立再燃でテクノロジー株の不安が拡大

はじめに

5月30日、米国株式市場では米中間の貿易摩擦が再び激化し、特に AI・半導体株 が一斉に売りに押されました。中国への技術制裁への懸念とトランプ前大統領の強硬発言が投資家心理を一気に冷え込ませ、フィラデルフィア半導体指数は2%超の暴落を記録。NVIDIA、TSMC、AMD、クアルコム、ASMLといった主要企業の株価が大幅下落し、「AI・半導体=成長株」という市場の定説は大きく揺らぎました。

AI & Semiconductor Stocks

米中対立再燃、市場心理にも影響

ジュネーブ貿易合意を巡る公開対立

米中両政府は、「ジュネーブ貿易合意」の履行をめぐり公開の場で非難を交わしました。トランプ前大統領は自身のソーシャルメディアで「中国は合意を完全に破った」と痛烈に批判。政権内の高官からも「あらゆる手段を検討する」と強いメッセージが出され、これを受けて中国大使館も即座に反論声明を発表しました。この応酬によりリスク回避姿勢が強まり、主要株価指数は一時大幅に下落しました。

トランプ発言による一時的な落ち着き

その後、トランプ前大統領が「習近平主席と直接対話して問題を解決する」と表明したことで、安値を拾う買い戻しが入って下げ幅は縮小し、結局は小幅な変動で終えました。それでもテクノロジー株が貿易関連のニュースにいかに敏感かを浮き彫りにしました。

AI・半導体株が売られ続けた理由

半導体セクターの急落(2%超下落)

米国政府が中国のハイテク産業に対する大規模な制裁を示唆したことで、半導体関連企業は真っ先に売り込まれました。フィラデルフィア半導体指数は2%以上下落し、その構成30銘柄のうち29銘柄が下落。ブロードコムのみが小幅高で耐えた形です。

  • NVIDIA の株価は2.92%下落
  • TSMC もサプライチェーンへの影響懸念から軟調
  • ASMLAMDクアルコム なども軒並み売り込まれました

なぜこれほど急落したのか?

  1. サプライチェーンリスクの高まり
    多くの半導体メーカーは中国の工場や部品に依存しています。制裁強化により供給が寸断される可能性が高まると、将来の収益を見込めなくなるとの思惑から売りが先行しました。
  2. 投資家心理の悪化と短期マネーの逃避
    テクノロジー銘柄は一般に高倍率で取引されるため、リスクオフに傾くと一気にポジションを解消する短期投資家が増え、株価が過度に落ち込むことがあります。
  3. 安全資産への資金シフト
    世界的な景気減速リスクが高まる中、投資家はハイリスク・ハイリターンのテクノロジー株から、米国債やディフェンシブ銘柄へと資金を移しました。

原油と金市場の動向

原油価格下落の背景

米中対立再燃で経済成長が鈍化しそうだとの懸念から原油需要の先行きが危ぶまれました。さらにOPEC+が7月に日量41万バレル増産を検討しているという報道も重なり、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)とブレント原油はともに約1%下落して取引を終えました。

金価格は方向感を失ったまま横ばい

金価格は一時、貿易摩擦懸念で急騰しましたが、過去1か月間はレンジ相場に閉じ込められています。

  • ヨーロッパ連合(EU)との交渉進展や利益確定売りが上値を抑え、金ETFからの資金流出も下押し要因になりました。
  • 一方、米国の信用格下げリスクや中央銀行の購買意欲が下値を支えています。
    シティグループやゴールドマン・サックスは、当面金は1オンスあたり3,100ドルから3,700ドルのレンジで推移すると予測しています。

米国防長官、アジア同盟国に防衛費拡大を要請

5月31日付の日本『朝日新聞』のインタビューで、米国防長官ピート・ヘグセス氏は「北朝鮮や中国からの脅威に対抗するためには、アジアの同盟国がより多くの負担をしなければならない」と強調しました。欧州諸国がGDPの5%を防衛費に充てている点を手本とすべきだと述べ、アジア各国に防衛予算の増額を事実上迫った格好です。シャングリラ会議でも同盟国の責任強化を訴え、米国が自国の戦力を戦略的に集中できるよう役割分担を求めました。

意義と影響

  1. アジア諸国の防衛費負担増加
    韓国や日本などの同盟国では、防衛費を増額するかどうかが国内議論の焦点となる可能性があります。
  2. 経済的負担と政策調整
    軍事支出を増やすことは、インフラ整備や社会福祉など他の重要施策への予算配分を圧迫し、成長にマイナス影響を与える恐れがあります。

結論

5月30日の米国市場では、米中貿易摩擦再燃、対中技術制裁懸念、OPEC+の増産見通しなど複数の要因が重なり、AI・半導体株を中心に大規模な売りが出ました。フィラデルフィア半導体指数は2%超下落し、NVIDIAからTSMCまで主要な企業が軒並み株価を下げました。この動きは、地政学的な不確実性がテクノロジーセクターにとって大きなリスクになり得ることを示唆しています。同時に、原油と金のマーケットにも同様の波及が見られ、世界経済がいかに緊密に連動しているかを改めて浮き彫りにしました。さらに、米国防長官ヘグセス氏のアジア同盟への防衛費増額要請は、地域経済と政策の緊張をさらに高める可能性が高く、投資家や政策当局は今後の展開に注視せざるを得ません。

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